祖先の勲功によって代々高官を輩出する名家、賈家一族の貴公子・賈宝玉(か ほうぎょく)は、立身出世のための勉学を嫌い、詩を愛する自由奔放な青年。家長である賈母・史太君の寵愛を受け、壮麗な邸宅で若い才女たちに囲まれながら、何不自由なく遊び暮らしていた。
ある時、江南の塩政大臣であった林如海が、莫大な財産と一人娘の林黛玉(りん たいぎょく)を残して、この世を去る。一人残された黛玉は、母方の祖母である賈母を頼り、栄国府での暮らしを始める。神経質で嫉妬深く病弱ながらも、聡明で詩才に恵まれた黛玉こそが、宝玉の心を最も惹きつける存在だった。魂で結ばれたかのように引かれ合う2人だが、時に素直になれず、すれ違いを繰り返していた。
一方で、栄国府を訪れていた薛宝釵(せつ ほうさ)は、優雅で品行方正であったため、邸内の者からも慕われていた。宝釵が身に着ける金鎖には、宝玉の持つ〈通霊宝玉〉と対になる句が刻まれていた・・・。
一族のしきたりや嫉妬、欲望の中、宝玉に降りかかる運命と共に一族の悲劇が始まろうとしていた。
映画監督 滝田洋二郎氏
中国四大名作とよばれる『紅楼夢』が中国女性ベテラン監督胡玫(フー・メイ)の手で蘇ったと聞き、映画館に駆けつけました。ファンの心を捉えて離さない圧倒的伝統美と紡がれる歴史物語。
日本の『源氏物語』と呼ばれる本作の持つ魅力がスクリーンに溢れ、まるで絵巻物を見たかのような味わい。
若い人にも、ぜひ見てほしい一作です。
映画監督 本木克英氏
壮麗な中国貴族の交情が、大胆なスケールと流れる様なテンポで描かれている。登場人物の心の動きを繊細に引き出し、悲恋の物語を品位ある世界観で作り上げた、名匠・フー・メイ監督の手腕に感服するばかりである。女優 栗原小巻氏
物語の壮大な叙事詩。フー・メイ監督の繊細な叙情詩。若き俳優が情熱を持っておりなす詩劇。
美しい絵画のように、美しい音楽のように、美しい映画『紅楼夢』。
映画芸術を愛するすべての皆様へ、最高傑作が生まれました。
慶應義塾大学教授 吉川龍生氏
中国で熱狂的なファンを持ち、さまざま面からの研究対象ともなり、何度も映像化されてきた不朽の古典小説『紅楼夢』。圧倒的なスケール感と現代の映像技術で再現された本作は、過去の映像作品では再現困難だった壮麗壮大な物語の世界を、新たな質感と壮大さでアップデートしている。